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第30回 旭ビ教養講座
2019.09.19 Thursday 14:59

ssage bod

認知症とノーベル賞− 

病気/健康の話を少しさせていただきましたが、植物/作物の話に戻る前に、現在最も興味が持たれていると言ってもいい病態を説明するのを忘れていました。認知症です(こういう私も認知症なのでしょうか、、、)。
 ポール・グリンガードPaul Greengard 博士は2000年のノーベル医学・生理学賞の受賞者です。彼は、米国の神経科学者で、脳神経情報伝達システム解明の功績により、アービド・カールソン、エリック・カンデルと共に受賞しました。
    私と私の家族3人は、1998年に博士のご自宅にお招きをいただきました。私は当時米国Yale大学Cell Biology部門の客員研究員だったのですが(当時は急性膵炎の発生メカニズムに関してHarvard学説とYale学説が激しく論争していた時期で、私が東大で出した研究結果がたまたま!!Yale学説を支持したので招かれた訳です)、我々家族4人は彼の自宅で行われるパーティーに招かれました。彼のお屋敷は、断崖絶壁の上に立っていると聞いていましたが、道に迷ってしまったので、黒いフサフサ毛の大きな犬を連れている初老の方に道を聞いたところ親切に教えてくれました(彼がPaul Greengard 博士であることは2000年に東京世田谷の自宅で、ノーベル医学・生理学賞受賞者として紹介された彼の顔写真を新聞で見るまでは分かりませんでした(^^;)。
 Paulは“何だかの候補者candidate”であると、当時私をYaleに呼んでくださった Fred Gorelick教授は説明してくれたのですが、はっきり聞き取れなかったのですが、「まあいいや〜」と聞き返さず(まさかノーベル賞候補者と言っていたとは!!)、パーティーで隣に座ってお話しする機会を得ました。私は(あっ!さっきの犬のおじさんだ!)「大きくて毛並みも黒々で立派な犬ですね〜」とか、彼は私に「君がFredが言っていた日本から来た外科医かい?お腹の中ってどうなっているの?」というような方向の話になってしまいました、、、もしPaul Greengardと分かっていたら、なぜサイクリックAMPを予想できたのか、またタンパク質DARPP-32に辿り着いた時の喜びとか聞けたのにと、今はとても残念に思っています。
    因みに、同時受賞のカールソン博士は、スウェーデンの薬理学者で、神経伝達物質ドーパミン dopaminの発見とそのパーキンソン病における働きに関する研究により受賞し、もう一人のカンデル博士は米国の神経学者で、神経系情報伝達に関する発見の功績ですが、彼の研究により開発された記憶強化薬や忘れ薬は議論の対象となりました。
 ノーベル賞は、それまで信じられていたことが根底から覆ってしまうような研究に対して贈られます(例えば、 ピロリ菌の発見がノーベル賞なのは、「がんは、ヒトからヒトに“感染する”かもしれない」というパラダイムの転換によります)。Paulらは、それまでは脳の中の“命令”は“電線のようなもの”を介して伝えられていくと考えられていたものが、神経伝達物質という“物質”で伝えられていくことを見出しました。「それなら“物質”が少なくなったら補充すればいいじゃないか!」となり、パーキンソン病や認知症の治療に道を開きました。
    カールソン博士は、脳の中では、神経シグナルの伝達は、神経伝達物質ドーパミンがそれを担っていることを突き止めました。Paulの研究はカールソン博士の研究成果を土台に更にその先を探求し、ドーパミンが神経細胞の細胞膜上の受容器と結合したとき、細胞内のcAMPの増加を引き起こすことを証明しました。このcAMPの増加が、新しいタンパク質を作るためにDNAを転写させたり、シナプスにより多くの受容器を移動させたり、細胞表面にイオンチャネルを移動させたりします(実際の治療では、ドーパミンを投与しても血液脳関門を通過できないので、その前駆物質であるl-dopaを投与します)。
 認知症は、日本では65歳の1.5%の人が認知症、75歳では7%、85歳以上の人では27%というデーターがあります。ところで、「認知症」は病名ではなく、認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす“状態”のことです。この状態を引き起こす原因(病気)にはさまざまなものがありますが、例えば、アルツハイマー“病”が引き起こした認知症を「アルツハイマー型認知症」と呼んでいます。現在日本では、このアルツハイマー型認知症がもっとも多く、全認知症の6割以上を占めると言われています。その他、脳血管障害型認知症(約19%)、レビー小体型認知症や前頭側頭葉型認知症など(約19%)となりますが、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症やクロイツフェルト・ヤコブ病等でも認知症になります。
    ちなみに、レビー小体病型認知症とパーキンソン病とは同じ病態で、神経細胞の中にレビー小体(タンパク質の円形の異常な沈着物)を生じます。そして、これができると神経細胞は死んでいきます。レビー小体が蓄積する部位が、大脳皮質なのがレビー小体病型認知症、脳幹の奥深くに位置する黒質に蓄積するのがパーキンソン病です。パーキンソン病も進行すれば、認知症を発症します。
    認知症の最初の治療薬は1999年に「抗認知症薬」として認可された塩酸ドネペジル(商品名アリセプト®︎)で、日本で開発されたものです。これは神経伝達物質アセチルコリンの減少を食い止める「コリンエステラーゼ阻害薬」と言われるもので主にアルツハイマー型認知症の進行を抑えるとされています。開発者の一人杉本八郎が、認知症になった母親に誰か?と尋ねられ「息子の八郎ですよ!」と返えたところ、「そうですか。私にも八郎という子どもがいるんですよ」と言われ、それをきっかけとし会社の2度の新薬開発中止命令を拒否し、5年以上の歳月をかけて新薬ドネペジルを開発した、というエピソードは有名です。
    2011年になって新たに3剤が認可されました。リバスチグミン(イクセロンパッチ®︎、リバスチグミンパッチ®︎)は貼り薬ですので嚥下障害のある方でも大丈夫です。ガランタミン(レミニール®︎)はアセチルコリン分解酵素を阻害する作用に加えて、ニコチン受容体に対する刺激作用もあり効果が持続します。また、メマンチン(メマリー®︎)は全くメカニズムの異なる抗認知症薬で、グルタミン酸による神経細胞の過剰な興奮による細胞死を防ぎます。
    しかし、どの治療薬も認知症の症状が進行するのを抑えることはできても、完全に治すことはできません。副作用の割りに効果が高くなく、薬の有用性が不十分だとして、フランスでは2018年に医療保険の適応対象から外れました。
 ところで、1967年公開されて一大センセーションを巻き起こし、現在もその続編が製作されている映画「猿の惑星」は、NASAの宇宙飛行士が飛行船で不時着した惑星は、猿がヒトを支配している惑星でした。そして、最後に砂に埋もれた自由の女神像を発見して「ここは(未来の)地球だったんだ、、」と気づいて終わるのですが(写真(permission to use)は1967年公開 された映画「猿の惑星」)、2011年公開の「猿の惑星:創世記」は、現代に戻り、どうして猿が高い知能を持ち、また狂暴化していったのかを描いた作品ですが、チンパンジーにアルツハイマー型認知症の治療薬を投与したことがきっかけです。「何!?俺の研究から開発した薬で猿が狂暴化したというのか!!」というようなことは決して言わない温厚なPaulは、映画を観ながらきっとガハハハッと笑っていたと思います。
    認知症を完治させる薬がない今日、私を含めて誰も認知症にはなりたくない訳で、それにはどうしたらいいか。それには予防しかありません。まず認知症を発症させるもとの病気にならないことです。脳血管障害を起こさないために、血圧やコレステロール値等の高い方は医師に相談するのがよいでしょう。また、すでにその病気になってしまっているのでしたら、例えば正常圧水頭症や甲状腺機能低下の方は、シャント手術や甲状腺ホルモンの内服が必要かもしれません。しかし、それ以外の病気は予防法、治療法がまだ確立されていません。
    アルツハイマー型認知症になる原因の一つにアポトーシスがあります(アミロイド仮説)。アポトーシスとは自分の“細胞内にプログラムされた”死のことで、例えば手足の生えたオタマジャクシの指の間の“水かき”がなくなってカエルになっていくのがそれです。“プログラムされた”とは何かの原因でそのスイッチが入ると細胞の死を始めてしまうメカニズムです。認知症のスイッチを入れないためには、毎日を諦めたらダメだと思います。諦めてしまい、生活がだらしなくなると、アポトーシスのスイッチが入り「もうお前は用がなくなったから死になさい〜」というふうになって認知症が始まってしまうような気がします。
 認知症の発症を遅延させるには、EPA/DHA (「第24回 旭ビ教養講座」)やカルシウム等の摂取も勿論大切ですが、「俺にはまだやることがある。まだ死んでたまるか!」という気迫を持って毎日突き進んでいくことではないかと思います。それは、心、精神だけでなく肉体もどんどん使い、社会のコミュニティーにも入って「自分はまだ必要とされているんだ!」という意識を持ち、“自分の細胞にプログラムされた”アポトーシスを発動させないようにするのが重要ではないかと思います。この考え方は、国立長寿医療研究センターの提唱する“コグニサイズ”に通じるものがあります。英語のcognition(認知) とexercise(運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)です。それはセンターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。
 私の周囲には、現在84歳、88歳、95歳の3人男性と87歳の女性がいますが、4人とも皆生き生きと自分の仕事をし、男性の1人は自然食派、とくに青味魚が大好きで、他の男性2人は無類の牛乳(カルシウム)好きです!


Category : 肥料 | Author : tmek | - | - |