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第25回 旭ビ教養講座
2019.03.22 Friday 08:30

ssage bod

F1−雄性不稔が登場するまで− 

500万年前に人類が誕生し、2万年前に定住するようになり、1万年〜数千年前にかけて、イネ、トウモロコシ、コムギ、サツマイモなどが栽培され始めました。
1700年頃に植物の人工交配が初めて行われ、1865年にメンデル遺伝の法則が発表されて以来、人工交配により重要な作物や野菜の優良品種が開発されました。
1926年に遺伝子の概念が明らかになり、現在は世界的に遺伝子組み換えによる品種改良が中心の時代になっていますが、それまでは、育種法、すなわち交配fertilization、突然変異mutagenesis、細胞融合cell fusionによって品種改良が行われてきました。今回は、突然変異(雄性不稔)を利用した育種法が導入されるまでの歴史を振り返っていきたいと思います。
ここでF(first filial generation)とは「一代雑種」のことですが(「一代交配種」とも)、現在一般にはF1品種の農作物は、その一世代に限って安定して一定の収量が得られる品種として知られ、多くの種苗会社が力を入れる分野となっています。
1941年米国のシュルは、2つの“近交系”を交配したときのF1品種が両親に比べて著しい強勢を示すことを報告しました(ヘテロシスheterosis)。“近交系”の交配には、無限の可能性が示されたと言ってもよかったわけです。
 例えば、とても甘くておいしいスイカがあるが皮が弱く輸送の途中で割れて長距離輸送に向かないが、一方味は今一だが非常に丈夫でカラスがつついても割れないくらい皮の固いスイカがあるが、これらをかけ合わせたら美味しくて遠くまで輸送できるスイカが作れるのではないかとか、将来根こぶ病に強い白菜が作れるのではないか、と考えたわけです。
しかし、Fはまずは雑種にしなければなりません。自分の花粉で自分が受粉してしまってはFになりません。つまりある植物の花のめしべに他の植物のおしべの花粉をつけてやり受精すれば交配した植物ができるわけですが、もとの植物の花粉も着いてしまうともとの植物も育ってきてしまい、“近交系”ですのでその分別は簡単ではなく、関心はもとの花の子房/果実に入っているタネだけですので、これでは大変です。
そこで考えられたのがもとの花の花粉をなくす/雄しべをなくすことでした。
最初、試みられたのは、トウモロコシでした。まず、トウモロコシは雌しべと雄しべが別の花になっている単性花(unisexual flower)ですので、トウモロコシのてっぺんに咲く雄花を全部鎌で取り除き、そして傍に欲しい雄花の花粉を出すトウモロコシを植えておけば、トウモロコシは風媒花ですので自然に雑種ができます。アメリカではこういう形でFトウモロコシの栽培が始まりました(雄性不稔の母親を使う方法が登場するまでは、たった1株の雌(テキサス型)が増やされていました)
 しかし、この“除雄”という方法は、雌しべと雄しべが別の花に存在する単性花では容易でしたが、自然にある顕性植物の95%を占める植物、つまり雌しべと雄しべとが同じ花に共存する両性花(bisexual flower)では、簡単なことではありませんでしたが、手先の器用な日本人は最初にそれをやってのけました。
 世界で初めて、両性花の“除雄”に成功したのは日本人で、1924年(大正13年)埼玉県農事試験場からFナス「埼交茄子」が発表されました。これは非常に雑種強勢(hybrid vigor)が働きたくましく、長い期間育って実が沢山採れました。これは、雌しべが熟し、受精可能になる前のつぼみの時に、小さなつぼみを無理やり開き、雄しべを全部引っこ抜いてしまい、雌しべが受精可能になった時に、別の品種の雄しべの花粉をとって受粉させる、という方法で交配されました。アメリカでのFトウモロコシの販売開始が1933年ですので、これは、単性花と両性花を通じて世界初の“除雄”ということになります。
 その後、Fスイカ、Fキュウリ、F白菜等と続きました。
しかし、やはり両性花の除雄は大変な労力を要したので、次に「自家不和合性」(self-incompatibility)を持った植物を用いた方法が報告され、これは日本独特の技術で日本のお家芸とも言われました。これは例えばアブラナ科の植物である菜の花は、小さい花がごちゃごちゃしており、雄しべをいちいち引っこ抜いて花粉をかける作業は容易ではなく、また莢(さや)に入っているタネは10粒から20粒と少なく、人件費がかかりすぎて採算が取れませんでした(トマトやナスは一つの果実で500粒ほど、スイカになると1000粒位のタネが採れるといいます)
アブラナ科等の野菜は、自分の花粉でタネをつけることができず(自殖できない)、他の株の花粉でないとタネがつかないとされ、その性質を「自家不和合性」と言います(菜の花は、英語ではrape flowerと呼ぶそうです、、、しかし、この能力は新しい遺伝子型を作成し、地球上に被子植物が広がった成功の要因の一つであるとされています)
しかし、「自家不和合性」はつぼみの時には働かず、花が成熟してから始まるので、つぼみの時に小さいピンセットでつぼみを開いてすでに成熟した花粉を雌しべにつけてやると受粉し、自分の花粉で雌しべがタネをつけます。すると当然「クローン」が出来上がります。この作業を一つ一つのつぼみ全部に行うと、たった一株のクローンが何百、何千粒とできることになります。
 「自家不和合性」を用いた例は、根こぶ病の耐性を持つカブ(自分の花粉でタネをつけなくなってしまったカブ)の横に、同様に自分の花粉でタネをつけなくなった白菜を交互に置く。カブの花粉でタネをつけた白菜のタネと、白菜の花粉でタネをつけたカブのタネができるわけですが、カブを全部つぶしてしまえば、カブの花粉のついた一代雑種を持つ白菜のみが残ります。これがカブの根こぶ病耐性を取り入れたF白菜です。
 しかし、育種法は、雄性不稔の発見により一変します。1925 アメリカ/カリフォルニアでジョーンズ技師が玉ネギ畑で、雄しべが退化してしまって花粉がでない花を偶然見つけたことが発端となり、1944年アメリカで、雄性不稔の母親を使って作られた赤玉ねぎが発表されます。この後、育種法は交配法から突然変異を利用した方法へ変わっていきます。
一方、こういう品種を改良しよう、タネを改良しようという世の中の流れに対し、現在あるタネを万一の時に備えて蓄えておこう、という動きもあります。ベント・スコウマンが提唱したアイデアを、ビルゲイツが主導し、ノルウェー量スヴァ―ルバル世界種子貯蔵庫が2008年から操業しています。これは、世界100カ国以上の支援を受けて、大規模で深刻な気候変動や自然災害、植物の病気の蔓延、核戦争に備えて農作物種の絶滅を防ぐとともに、栽培再開の機会を提供することを目的として、最大300万種の種子が保存可能な地下貯蔵庫で、マイナス1820℃に保たれています。永久凍土層にありますので、万一冷却装置が故障してもマイナス4℃の環境で保存されることになります。2017年現在、88万種が貯蔵庫に保存されていると報告されています。 


Category : 肥料 | Author : tmek | - | - |