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第22回 旭ビ教養講座
2018.12.31 Monday 09:35

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農薬(除草剤) 

雑草という概念はもともと作物の栽培に伴って生まれてきたもので、農耕地において「作物以外のすべての植物」「“人間の意志に反し”発生、生育する植物」とされましてが、現在では道路やゴルフ場等、非農耕地でも広く人間が管理するところに“望まれなく”生える植物をも含めて雑草とされています。

しかし、この“雑草”を上手く利用した例もあります。「スズメノカタビラ」は日本を始め多くのゴルフ場にとって迷惑な雑草ですが、この雑草は時々セントアンドリュースのグリーンで使われるようです。20157月の全英オープンもそのようで、例年ならもっと茶色っぽい色で芝が枯れているように見えるのに、この年のグリーンは緑色が濃く、芝目が強くて読むのが難しそうで、転がるボールを見てもかなり遅目で重たかったからです。しかしこれもスコットランドのような涼しい所だからできる話で、暑さと湿気のある日本でベントグリーンにスズメノカタビラが入るととんでもなく醜いグリーンになってしまいます。

 このような例外を除くと、雑草は昔から“全く厄介な”もので、雑草防除の機具について最初に書物に現れるのは紀元1世紀のローマ帝国時代です。

現在、先進国では雑草の処理は農薬(除草剤)に頼らざるを得ない状況と言えますが、雑草は収穫する作物と同じ“植物”ですので、1940年代初頭における選択的有機除草剤2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 (2,4-D)の登場は、それまでの“無機物を使った除草(当然、すべての植物が枯れてしまう)”の考え方を全く変えてしまいました。

農作物の雑草は、水田雑草、畑雑草、水田・畑共通雑草に分けられますが、日本では主食である米/水田雑草に関心が集まるのは当然のことだったと言えます。第二次世界大戦後まもなく合成オーキシンである2,4-Dがアメリカから導入され、最初の水田用除草剤として1950年に農薬登録されました(一般名は2,4-D/日本の農薬としての登録名は2,4-PA)。これは、インドール酢酸様活性を有し、イネ科植物には影響を与えずに広葉植物を枯らし、現在でも広く使用されています。

その後 19601970 年代をピークに新しい構造・作用をもつ除草剤が次々開発されました。1970年代には、電子伝達系を破壊することで光合成を阻害するアトラジン(ゲザプリム®)が登場しました。光合成の機構は動物には無いものなので、その意味では動物には無害です。アトラジンは発芽直後の植物を枯らすのに有効なので、農作物生産時の除草剤としてよく使われ、色々な農作物に使用されています。その使用により収穫が34%増えたとする報告もありました。アトラジンは土壌中の微生物により分解され(半減期は13261)EUでは使用が禁じられていますが、主にトウモロコシや小麦などの畑に世界80ヶ国で用いられ、世界でも多く使用されている除草剤です。 

また、1970年頃の低薬量でも効果のあるスルホニルウレア(SU)系の化合物の登場も画期的なことでした。SU系剤の施用量は初期の除草剤2,4-D1/100程で済むようになりましたので、人畜に対する安全性も高くなり、土壌への残留も少なく環境への負荷も少ないとされました。       

除草剤を使用する際の注意は、他の農薬である殺虫剤、殺菌剤と同じですが(旭ビ教養講座 19回、21)、除草剤の場合、すぐにその除草剤に耐性を持った雑草が生まれてくることが問題で、更にその雑草に効く除草剤を開発する、という構図になってしまっていました。グラフは、9種類の除草剤に対して除草剤抵抗性変異をした雑草の経時的変化です。アルファベットは、Herbicide Resistance Action Committeeに準じています。A: アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ’(ACCase)阻害剤は膜合成を阻害し、イネ専用除草剤ともいわれています。 G: アミノ酸合成阻害剤で、非選択的除草剤グリホサート(ラウンドアップ®)等 D: ビピリジニウム系に分類され、活性酸素を発生し光合成を阻害するパラコート®、ジクワット®等。 C: 光化学系II阻害剤でトリアジン系のアトラジン(ゲザプリム®)等。E2000年頃より登場したPPO(protoporphyrinogen oxidase)阻害剤。B: アセト乳酸合成酵素阻害剤であるSU系剤。O: 合成オーキシン(2,4-D)で、植物のホルモン作用を撹乱するホルモン剤。K1:微小管重合阻害剤としてのジニトロアニリン系や有機リン系化合物。F2: 2008年頃より登場したHPPD(4-hydroxyphenylpyruvate dioxygenase)阻害剤です。

Cグラフの上昇は、1970年代から1980年代にかけて欧米のトウモロコシにアトラジン抵抗性変異株が生まれたことによります。1990年代からのBの上昇は、SU系除草剤抵抗性変異株が非常な勢いで増えてきたことを示しています。

ここで、1996年に非選択的除草剤、すなわち直接接触したすべての植物を枯らすラウンドアップ®に対して発想の転換が行われ、グリホサート抵抗性遺伝子組換え“作物”として、ダイズが市場に出たことはパラダイムの転換でした。

それ以降、トウモロコシ、テンサイ等が次々に開発され、世界における組換え作物の栽培面積は急速に増え、2010年には、最大の栽培国米国は作付け面積の約70%に及びました。除草剤抵抗性“作物”の登場は、不耕起栽培でも従来の耕起栽培並みの収穫量を可能にし、米国農業における長年の耕起による深刻な土壌流亡、耕土層の劣化の問題を解決したことは、評価されるかと思います。

除草剤の2016年の全世界での売上高は272億ドルを超え、農薬全体の半分を占めるようになってきました(1960年には農薬全体の20)

こうして除草剤が進歩・発展した一方で、除草剤をめぐる問題も起きました。

パラコート (Paraquat®)は、1955年頃に登場したビピリジニウム系に分類される非選択型除草剤の一つでしたが、これは活性酸素の発生により作用するものですので、動物に対しても毒性があり、時に自殺や他殺に使用されています(現在、マレーシアとEUでは禁止されている。また、解毒剤は存在しない)

オレンジ剤(いわゆる枯葉剤)はベトナム戦争で盛んに使われましたが、これは広葉用除草剤2,4,5-T2,4-Dの混合剤でしたが、一般の2,4,5-T剤よりさらに多くのダイオキシンの一種であるTCDDを含んでおり、実際にベトナムで健康被害の原因となったのではないかと指摘されて問題とされました。

日本でもかつて除草剤2,4-Dやクロルニトロフェンなどに微量のダイオキシン類が含まれていたことが明らかにされ問題になりましたが、現在登録されている日本の農薬にはダイオキシン類は含まれていません。

また、日本では1970年代の極左テロ集団による爆弾テロに、当時販売されていた“火薬に転用可能な”98%塩素酸塩の除草剤が使われてしまいました。

グリホサート(ラウンドアップ®)は、1980年代半ばに登場した非選択的除草剤でしたが、現在では遺伝子操作により、これに耐性を有する作物が開発されたため、「除草剤と耐性作物種子(遺伝子組換え作物)がセットで売られる」ようになりました。しかし、2015年にWHOの附属機関のIARC(国際がん研究機関)は、2番目に発がん性リスクの高いグループ「ヒトに対しておそらく発がん性が恐らくある」2Aに、グリホサート、マラチオン(殺虫剤)、ダイアジノン(殺虫剤)を追加指定しました。

種苗業界?で世界No1の売り上げのアメリカのモンサント社は、今年ドイツの製薬会社バイエル社に買収されました。これで117年続いたモンサントの名前は消えますが、これは遺伝子組み換え作物等のネガティブイメージを払拭するのが表面的な目的のようですが(枯葉剤もモンサント社が作ったものです)、合併の真の目的は発がん性のない除草剤の開発、あるいは“発がんした際の”治療薬の開発・販売が目的なのかもしれません。まるでSFの世界のようです。



 


Category : 肥料 | Author : tmek | - | - |