旭ビ式施肥設計書:硫安と尿素
生物にとってpHは重要なもので、心臓を持つ動物ほどではないにしても(第9回 旭ビ教養講座)、土壌のpHは作物にとっては多量要素や微量要素の吸収に影響し(図1)、pHが適正な範囲にないと、近々の1〜2年では大きな変化は見られないかもしれませんが、ゆくゆくは作物が取れなくなっていってしまいます。
弊社の施肥設計は基本的に有機系の肥料を使い、pHが酸性に傾いていればアルカリ性(塩基性)の肥料を、アルカリ性に傾いていれば酸性の肥料を使います。
また、窒素Nを補充するために、単肥(化成肥料)を使用することがあります。弊社の設計では硫安(NH4)2SO4と尿素CO(NH2)2を、土壌のpHにより使い分けていますが、それは硫安は酸性、尿素は相対的にアルカリ性だからです。尿素はアミド基-NH2があるので中性なわけですが、“植物の中性”はpH5.8~6.5と少し酸性側に寄っているので、尿素は“相対的にアルカリ性”と考えていいと思います。
図2は今も今金(いまかね)地方でミニトマトを作っている農家様の2021年の施肥設計書ですが、土壌pHが7.2とかなりのアルカリ性になっています。少しでも中性に戻したいので、単肥は酸性の硫安を使用しました。
弊社元顧問の高田は、「硫安は表面施肥(畑が仕上がったら上から散布)し、尿素は散布して2日ほど置き、すき込んでから耕せ」とよく言っていました。それは、窒素Nの含有量が、硫安21%、尿素46%と尿素の方がかなり多いからです。また、「尿素を撒く際には、植物の根に直接触れないように」と注意書きされていることがありますが、これも尿素が直接植物の根に触れると、窒素多過、すなわち葉の色が濃ゆく茎葉が柔らかくなってしまう恐れがあるからです。
また、アンモニア態から硝酸態へと変化していく尿素は長持ちしますので、保肥力が小さい砂地に使ったり、ECが上がりやすい泥炭地にも使用します(硫安を使うと、すぐ陽イオンと陰イオンになるのでECが上がってしまいます)。
ところで、硫安が何で酸性かは、硫安すなわち硫酸アンモニウムは、硫酸という酸と水酸化アンモニウムという塩基が化学反応を起こした結果出来た塩(えん)ですが、硫酸は“強酸”で水酸化アンモニウムは“弱塩基”であることによります。つまりその塩の性質は、“強い”酸/塩基の性質になります。同じように考えると、その塩が酸性を示すか、アルカリ性を示すかを推定することができます(表3、4、5)。
Category : 施肥設計 | Author : tmek | - | - |